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【ただいま研修中!】相談会参加をキッカケに独立の夢に向けて動いているミニトマト研修生の話
(更新日:2021年12月28日 文:熊本県新規就農支援センター就農相談員)
「農業」を職業にしようと思った方が、何からはじめたら良いのか、技術をどうやって身につけていくのか、農地の取得や支援制度の情報など、よくわからないという方は少なくありません。私たち「熊本県新規就農支援センター」はそのような方のためのワンストップ就農相談窓口です。
そこで、熊本で農業をはじめようと思った1人の相談者の方が農業を思い立ってから、就農するためにどのようにして情報収集していかれたのか、実例で紹介させていただきます。
今回、ご紹介する山下さんは、今から約1年前、熊本県新規就農支援センター主催の相談会に参加して現在、農業研修生として技術の習得や座学の学びに励んでいます。
今は、研修が終わる1年後の独立に向けて情報収集を重ねているところですが、1年前は、就農を考える皆さんと同じように、農業未経験で、何をどうしていいのかわからない状態でした。山下さんがこの1年経験したことは、皆様にとってより身近に追体験が出来、就農へのヒントになるのではないかと思います。
はじまりは就農相談会への参加がきっかけでした。
あなたも相談会に参加して、夢への1歩を歩みはじめませんか?
目次
1.熊本県新規就農支援センター相談会への参加
2.研修機関「NPO法人九州エコファーマーズセンター」との出会い
3.受入師匠農家 株式会社藤瀨農園との出会い
4.就農に向けて
1.熊本県新規就農支援センター相談会への参加
熊本市南区の山下貴史さん(33歳)は東京と熊本で有名アパレルブランドで働いていましたが、農家だった祖父が亡くなり、祖父が残した農地で自分も農業をはじめたいと思うようになりました。
そんな中、検索で「熊本県新規就農支援センター」の存在を知り、まずは就農相談のメールを送りました。
返事には、
〇農業経験がない山下さんには、技術の習得が大切であること
〇農家になるには50aが必要なこと(※注1 市町村により違いがあります)
〇熊本には研修機関が19機関(20か所)あること
〇要件が合えば支援制度を利用しながら研修に専念できること
〇研修終了後に利用可能な支援制度があること。
そのためには「認定新規就農者」になる必要があること
が書いてあり、熊本城ホールで開催される「新規就農セミナー&ミニ相談会」の案内もありました。
早速、相談会に申し込んだ山下さんは、「新規就農セミナー」でセンター長による熊本の農業の特徴、就農の流れ、支援制度などの紹介を受け、その後、個別相談会では、自分の状況を説明し、研修機関の情報を収集することになりました。
※熊本県認定研修機関情報
相談対応した熊本県新規就農支援センターの相談員より、山下さんの希望に合う研修機関を複数、紹介を受け、その中から、NPO法人九州エコファーマーズセンターに、より詳しい話を聞くことにしました。
(左より)(株)藤瀨農園 藤瀨修氏(受入農家)、山下貴史氏(研修生)、NPO法人九州エコファーマーズセンター 指導員 平岡浩晃氏(研修機関)
2.研修機関「NPO法人九州エコファーマーズセンター」との出会い
熊本県認定研修機関のNPO法人九州エコファーマーズセンターは、「経験豊富な現役プロ農家が、全国で活躍するプロ農家を育てる」というコンセプトを持った研修機関です。『農業者を育てるにはプロ農家である自分たちが育てる必要がある』という思いに賛同したプロ農家の人達と共に作られた研修スタイルは、発足当時、全国初の試みでした。
その長い歴史の中から、現在、短期研修を含めると1,200人以上の研修生受入れを行っています。
人事異動がないという強みを生かし、長年の経験に培われた指導員達のもと、相談者に適した研修受入農家を紹介し、マッチングを行っており、毎月、研修生が一堂に集合して共に座学を学ぶ機会も設けています。この集合研修は研修生同士の交流の場にもなっています。
指導員の平岡さんは、山下さんの「自宅がある熊本市近郊で研修したい」「ミニトマトを学びたい」という希望を聞き、同センターの受入師匠農家である、嘉島町の株式会社藤瀨農園を紹介しました。
3.受入師匠農家 株式会社藤瀨農園との出会い
受入農家である株式会社藤瀨農園の藤瀨修氏は、以前、受入農家に向けた研修会の際、シンポジウムのパネリストとして登壇され、このような事を話されていました。
〇面接時には目を見て話を聞き、その人が本気かどうかを知る
〇最初は体力面で挫折する人もいるが3日もすると体力もついてくる。それでも、最初の1週間から10日ほど研修の取り組み方を見て、色んな面でクリア出来た人を長期研修生として受け入れる。
〇研修生には「作物は人間を育てることと同じ。作物をいかに観察するか」その大切さを教えていく
〇農業の専門用語を使っても研修生には伝わりにくい。自分も父親の言葉の意味がわからなかった経験があるから、わかりやすい言葉で伝えることを心がけている。慣れてきたら、この地区の言葉を覚えてもらうようにして、上手く地域に溶け込んでもらう。
〇地区の区役には優先して行くように案内している。自分がどういう人間なのか、地区の人に挨拶をして覚えてもらう
〇就農した人は親子も同然なので、密に連絡をとりあっている。研修卒業生がよく事務所に情報を見つけに遊びにきてくれる。それだけ心を開いてくれているんだと嬉しく思う。
山下さんがNPO法人九州エコファーマーズセンター平岡氏と藤瀨農園を訪れた際も同様に、師匠農家は「この人を研修生として受入れて良いか」、研修生は「ここで学びたいのか」というお互いの気持ちを確認し、受入農家、研修生、双方の合意の元で長期研修に入ることになりました。
もちろん長期研修に入るまでには、まずは受入農家と研修希望者の方とのマッチングが行われ、その後「事前研修」を行っています。山下さんの場合は10日間、事前研修を受けています。
このように、研修というものは、自分の都合だけで進められるものではないという事、本格的な長期研修までには準備がいることを、研修をお考えの方は知っていただけたらと思います。
また、熊本県認定研修機関での研修を行う大きな強みは、年に数回、開催される「新規就農支援セミナーです。
これは、熊本県内で学ぶ研修生が一堂に集まって「気象」や、「土壌分析」、「経営ノウハウ」、「ライフプラン」などの座学を学んだり、「アグリPLIアセスメント」という農業人材適性・資質向上診断を受ける事ができ、学びの場であると同時に、情報収集や仲間作りの場になっています。
これらの研修は、自己の発見となり、方向性への道しるべとなります。技術のみならず、座学の面でも基礎をしっかり学ぶ機会があることは、将来農業者となられた時にきっと役立つと思います。
日本政策金融公庫が行ったアンケートによると、研修を2年受けた人と、受けない人の農業所得の差は1.5倍違うという結果が出ています。
4.就農に向けて
山下さんは、現在、ミニトマトの研修生として2年間の研修を学んでいます。
熊本市南区の祖父の農地は元々は米を作っていて、師匠と一緒に農地を見てもらった際、この地区の土壌はミニトマト栽培には向いていないことが判明しました。また、農地面積も50aに満たないものでした。
そこで、新たな農地を探すことになり、農地バンクの仮受申出書の申し込みをしました。
これは、熊本県全体の研修生が集まる集合研修「新規就農支援セミナー」の講演の中で、公益財団法人熊本県農業公社の中間管理機構(農地バンク)の説明案内があり、その数日後に講演者を訪ねる事にしたのです。
そこでは、借受申出書を提出する際のアドバイスとして、就農地周辺の状況や、「農業委員会などを訪問して相談するように」と話を聞き、早速、アポイントを取り農業委員会を訪問し、自分の足を使って、1歩ずつ農業者となるための情報を収集しています。
研修終了まであと1年。独立への夢に向けて、頑張っています。熊本県新規就農支援センターではこれからも山下さんを通じて、就農へに向けてステップアップしていかれる様子をお伝えしていきたいと思います。
★山下さんが夢を引き寄せているGoodポイント
◎ウェブ情報や頭の中だけではなく、実際に足を運んで情報を得ていること。(事前アポイントをとることも大事です)
◎相談を受けながら、次へのステップアップ情報、相談先を知り、1歩ずつ前に進んでいること。
◎人の話を素直に聞き、行動する力があること
これらの行動をとるうちに、農業関係者や地域の人達との関係が出来、それは自分の財産になっていきます。農業は1人では出来ないものです。地域の人達、仲間、関係者の人達に助けられながら成り立っていきます。今、周りの方達から学ばせていただいている山下さんですが、やがては地域の人達や後輩を助ける農業者になっていただけたら嬉しく思います。
山下貴史氏の就農への歩み
2020年9月末 熊本県新規就農支援センターへメール相談
2020年10月22日 「新規就農セミナー&ミニ相談会」参加。
就農相談員より希望に合ったいくつかの研修機関の紹介を受ける。
2020年10月26日 NPO法人九州エコファーマーズセンター(研修機関)訪問
2020年10~12月 ヒアリング、事前研修の中から株式会社藤瀨農園を研修受入師匠として検討。
事前研修実施後にも藤瀨氏、吉村事務局長、平岡指導員、山下氏、4者で協議して長期研修を決定。
2021年1月 株式会社藤瀨農園で2年間の研修開始(2022年12月31日まで)
マイナビ農業に熊本県新規農支援センターの記事が紹介されています。
研修機関について詳細が掲載されていますので、こちらもご参考にされてください。
◆マイナビ農業紹介記事_2022年1月28日掲載記事