葦北郡芦北町中村 学さん
- 就農年
- 2015年1月
- 主な作目等
- 柑橘類(果樹)
- 農業従事者
- 本人・妻
子供の頃北ドイツに住んでいたことがあり、そこで見た農村の素朴だが美しい風景が非常に印象に残っていたこと、海や山で遊ぶのが大好きだったこと、食べ物に強い関心のあること、また20代で訪れたニュージーランドで1年ほどりんご農家や牧場で働き、生活に必要な大方のものを(家でさえも)自分で作ってしまう、その自由で独立したおおらかな暮らしに憧れたこと、などが背景にありいつか日本でも田舎で、農業で生活できないかと模索していました。
なかなか踏み出せずにいましたが、「やらずに後悔するより、やってみて後悔する方がいい」と言う妻の声にも押され、ある程度の資金ができたことを機に場所を九州に定め家族で移住してきました。
研修の取り組み状況と感じたこと
2012年4月から芦北町の鶴田有機農園の研修生となり、柑橘類(甘夏、レモン、デコポン他)の栽培と有機農業について教えていただく生活を3年ほど送りました。鶴田氏には農家の視察へ連れて行ってもらったり、様々な人を紹介頂いたり、有機農業講座を開いていただいたりと、大変お世話になりました。
関東出身で日本の農村を知らないものには、良くも悪くも農業と地方の現実を知ることができた月日でした。栽培技術面や作物に対する理解と言う面では、まだまだですが独立にあたり最低限必要なラインには到達できたのではないかと思っています。
農地はたくさんあるものと思っていましたが、優良な果樹園地の話は非常に少なく、また農地流通のシステムが整備されていないことから、個人で探すことがなかなか難しいことを実感しました。人づてにしか話がありませんので、地域で信頼がある農家の方とのいい出会いがあるかどうかにかかっていると思いました。
(写真:鶴田有機農園の鶴田ほとり代表取締役と中村氏)
今後の(就農時を含めた)農業経営目標
鶴田氏の高齢の親戚の方から甘夏園1.4haを受け継ぐことになりました。柑橘を栽培するには寒波の被害を考慮する必要がない土地であることや、園の状態が非常に良く一等地であることから、隣県で引越しが必要ですが取得を決めました。
今後、労働負荷とのバランスを考慮しながら樹種の更新、農地の拡大等図って行きたと思います。甘夏に関しては、できれば有機JAS認証を取得したいと考えています。
機械は必要なものを最低限中古で揃えていく予定です。
農業への思い
農業は肉体的にきつい仕事も多いですが、自分の裁量で決められる所が魅力です。また、生物は食料がふんだんにあればそれなりに満たされるものだという風に考えると、食料そのものを作る農業は本質的にかなり満足度の高い仕事じゃないかと思います。8歳から0歳まで3人の子供がいますが、子供と過ごす時間もふんだんにとることができ、子育てにもとてもいい環境です。
農業の問題や始めるための障壁をあげていけばきりがありませんが、林業や水産業を加えて地域の自然の恵みを生かす農林水産業が地方の基幹産業であることは未来に渡ってかわることはないでしょう。できれば農業に対して新しい見方、やり方で取り組み、少しでも活性化につながればと思っています。
新規就農を目指す人へのアドバイス
地域との調和は大事ですが、高齢化と過疎化で悩む地方には新しい血もどんどん必要でしょう。農業の経営は厳しいと言われますが、他の産業を経験してきたものから見ると、既存の農家は何でもどんぶり勘定でコスト意識に乏しく、まだまだ経営努力する所はたくさんあるんじゃないかと見えるのも事実です。既成概念や地域の常識にとらわれず、自分の今までの仕事や経験を生かしたやり方で試して行けばいいのではないかと思っています。